正式名称「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」
この法律は,アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ,アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより,アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り,あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。
この法律において「アイヌ文化」とは,アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽,舞踊,工芸その他の文化的所産及びこれらから発展した文化的所産をいう。
国は,アイヌ文化を継承する者の育成,アイヌの伝統等に関する広報活動の充実,アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するよう努めるとともに,地方公共団体が実施するアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
地方公共団体は,当該区域の社会的条件に応じ,アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならない。
国及び地方公共団体は,アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては,アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとする。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
基本方針においては,次の事項について定めるものとする。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,基本方針を定め,又はこれを変更しようとするときは,あらかじめ,関係行政機関の長に協議するとともに,次条第一項に規定する関係都道府県の意見を聴かなければならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,基本方針を定め,又はこれを変更したときは,遅滞なく,これを公表するとともに,次条第一項に規定する関係都道府県に送付しなければならない。
その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以下「関係都道府県」という。)は,基本方針に即して,関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。
基本計画においては,次に掲げる事項について定めるものとする。
関係都道府県は,基本計画を定め,又は変更したときは,遅滞なく,これを国土交通大臣及び文部科学大臣に提出するとともに,公表しなければならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,基本計画の作成及び円滑な実施の促進のため,関係都道府県に対し必要な助言,勧告及び情報の提供を行うよう努めなければならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,アイヌ文化の振興等を目的として設立された民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三十四条 の規定による法人であって,次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを,その申請により,全国を通じて一に限り,同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,前項の規定による指定をしたときは,当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称,住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
指定法人は,その名称,住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは,あらかじめ,その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,前項の規定による届出があったときは,当該届出に係る事項を公示しなければならない。
指定法人は,次に掲げる業務を行うものとする。
指定法人は,毎事業年度,国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより,事業計画書及び収支予算書を作成し,国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。
前項の事業計画書は,基本方針の内容に即して定めなければならない。
指定法人は,国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより,毎事業年度終了後,事業報告書及び収支決算書を作成し,国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,この法律の施行に必要な限度において,指定法人に対し,その業務に関し報告をさせ,又はその職員に,指定法人の事務所に立ち入り,業務の状況若しくは帳簿,書類その他の物件を検査させ,若しくは関係者に質問させることができる。
前項の規定により立入検査をする職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があったときは,これを提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは,指定法人に対し,その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,指定法人が前条の規定による命令に違反したときは,その指定を取り消すことができる。
国土交通大臣及び文部科学大臣は,前項の規定により指定を取り消したときは,その旨を公示しなければならない。
第十条第一項の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は同項の規定による検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず,若しくは虚偽の陳述をした者は,二十万円以下の罰金に処する。
法人の代表者又は代理人,使用人その他の従業者が,その法人の業務に関し,前項の違反行為をしたときは,その行為者を罰するほか,その法人に対して同項の刑を科する。
政府は,アイヌの人々が置かれてきた歴史的,社会的事情にかんがみ,アイヌ文化の振興等に関し,より一層国民の理解を得るため,次の事項について適切な措置を講ずべきである。
アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現に資するため,アイヌ文化の振興等の施策の推進に当たっては,アイヌの人々の自主性を尊重し,その意向が十分反映されるよう努めること。
アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため,アイヌ文化の振興に対しては,今後とも一層の支援措置を講ずること。
アイヌの人々の人権の擁護と啓発に関しては、「人種差別撤廃条約」の批准、「人権教育のための国連十年」等の趣旨を尊重し,所要の施策を講ずるよう努めること。
アイヌの人々の「先住性」は,歴史的事実であり,この事実も含め,アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発の推進に努めること。
現在,行われている北海道ウタリ福祉対策に対する支援の充実に,今後とも一層努めること。